人の死の瞬間に
立ち会うのは
何度目だろう
なぜ私が
立ち会わなければ
いけないのか
なぜ身内でもなく
友だちでもなく
ほんの少し前に
出会った方の
最期の時を見守るのか
なぜ
お断りすることが
できないのか
私は医者でも
宗教家でもないのに
そして
その方の最期の
そのわずかな時間を
何度か一緒に
過ごしただけなのに
そんなことを
思いながらも
一番うしろに下がり
その場に立ち会う
最期の瞬間が
近づくたびに
何かが変わっていく
顔色が変わり
呼吸が変わり
胸の上下の動きが小さくなり
やがて静かになる
最期の時を
見守ってくれませんか?
と、言われたときの
ことを思い出す。
ひとりで生きてきたから
間際になって
いかにも親しかったんです
いかにも家族です
身内です
そんなものは
必要ないのです
私のことを
知らないあなたに
お願いしたい
私のことを
誰よりも知っているあなたに
お願いしたい
そう言われた
たしかに
死を覚悟したあとの
あなたのことは
私が一番
知っているかもしれない
生から死へ
人生が終わる瞬間の
厳かな儀式に立ち会う
そんな
供養の仕方が
あってもいいのかもしれない
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